第四十四幕 ノーカントリー

映画 『ノーカントリー』 ポスター


アメリカの困惑と苦渋   映画 『ノーカントリー』

 
 狩りの帰途、モス(ジョシュ・ブローリン)が偶然見つけ、持ち帰ってきた大金は、いわくつきの金でした。

 現場の状況から事情を察したモスは、妻カーラ(ケリー・マクドナルド)を実家に追いやり、自分はすぐさま逃亡を図ります。

 殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)が、大金の回収の仕事を請け負ったことが、モスの災いの元でした。

 誰にもシガーを止めることが出来ません。

 シガーの依頼主でさえも。


 シガーを行く手を阻もうとする者は、容赦なくシガーによって抹殺されていく、これがこの映画が観客に仕掛けた罠です。

 シガーのあり方を、観客がどう形容しようが、シガーがひるむことはいっさいありません。

 究極の絶対さ、これがシガーの意味するところです。

 シガーは人であって人ではありません。彼は不死身です。

 シガーの異様さを承知して、ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)はカーラに、牛の屠殺時の喩え話で身の危険への注意を促しますが、シガーの異常な拘り方は桁外れです。

 有無を言わさず、情け容赦なくシガーは殺人を重ねていきます。

 シガーによる死から逃れられる唯一のチャンスは、コイントスです。コインの表か裏か、運よく当たればシガーはなにも手出ししません。

 しかし、シガーから与えられたこのコイントスのチャンスでさえ、拒むことは出来ません。

 かかわる者はみなシガーに強要される、これがシガーと人々との関係のあり方です。

 シガーの過ぎ去った後に残る、ベル保安官の脱力感と絶望は、妻に、見た夢の隠喩として語られます。

 雪の森で父の姿を追う、ベル保安官(=アメリカ)に、希望が残されていることでしょうか。


 アメリカの困惑と苦渋を表出させた映画 『ノーカントリー』 見事です。



投稿者: 今井 政幸


『ノーカントリー』 公式サイト



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4 Comments

Anthony

映画にもなった『すべての美しき馬』を書いた米国の小説家コーマック・マッカーシーが、70歳を過ぎて、よくこんなモノを書いたなぁと思ったら、僕の大好きなコーエン兄弟が映画化。

こりゃ、期待ができます。

  • 2008/03/20 (Thu) 12:40
健康面白雑学!★apple

最近映画を見ていませんね。
たまには映画でも見て感動したくなりました。
今日の応援ポチ!(^_-)-☆

  • 2008/03/20 (Thu) 22:42
  • EDIT
縞猫

TVの深夜番組でこの映画が大々的に紹介されていました。
シガー役ハビエル・バルデムさんは、米アカデミー助演男優賞受賞だそうですね。

  • 2008/03/22 (Sat) 16:43
今井政幸

シガー役ハビエル・バルデム

圧倒的にいいです。この映画の一番の見所が彼です。

  • 2008/03/22 (Sat) 19:28