第四十三幕 バンテージ・ポイント

交差する視点が織りなす綾  映画「バンテージ・ポイント」

 スペイン・サマランカ、マヨール広場。午前11時59分。

 米大統領の演説のTV中継のため、女性プロデューサーのレックス(シガーニー・ウィーヴァー)が、幾つものモニター画面を見ながら、各現場からの映像を切り替えています。

 台本通りに読み上げないレポーター、不必要にデモをとり続けるカメラマン。さっそく本社から飛んでくるクレーム。

 それらにすばやく応対しながら中継を続けるレックスは、ステージに向かう大統領を警護するシークレットサービスの中に、バーンズ(デニス・クエイド)の姿を見つけました。

 「1年前、大統領を護って撃たれたのに、もう現場復帰とは・・・」。

 レックスは、すぐさまスタッフにバーンズが狙撃された当時の映像を準備させ、モニターに映し出し、確認します。

 マヨール広場では、サマランカ市長による米大統領の紹介がすみ、大統領の演説が始まりました。

 すると、大統領に銃弾が2発。

 撃たれた大統領は、ステージに倒れ込みます。

 騒然となる中継車内、レックスは、慌ててレポーターを呼び出しますが、レポーターはショックで声も出ず、中継になりません。

 アンカーマンに切り替え中継をやりくりすると、広場の外から、爆弾音が。

 騒然となった広場から人々がいっせいに逃げ出すと、ステージが大爆発し、映し出されたカメラには、死んだレポーターの姿がありました。

 レックスが呆然と立ちつくし、やむなく、その映像をモニターから消すと、スクリーンの画面は、ビデオの巻き戻しのように逆回転し、時間が戻り、午前11時59分、シークレットサービスのバーンズは、同僚のテイラー(マシュー・フォックス)と共に、大統領の警護につくところでした。

 <「羅生門」の子供たち> と呼ばれるこの映画は、こんな風に、大統領暗殺現場に立ち会った8人の視点から見た大統領銃撃の様子が、繰り返しその都度巻き戻され、少しずつ、事件の全貌が明らかにされていきます。

 TV中継車の中のいくつものモニター画面のように、それぞれに異なる位置から映し出された事実の映像が、やがて一つの真実を明らかにしていきます。

 が、A級映画 『羅生門』 と違って、「バンテージ・ポイント」はB級娯楽映画ですから、それぞれの人たちによる、それぞれの視点からの食い違い、錯綜した現実の不可解さが描写されているわけではありません。

 幾分しつこくも感じられる、巻き戻しの繰り返しは、着実に、事件の全貌を明らかにしていきます。

 観光で偶然広場に居合わせたアメリカ人旅行者ハワード(フォレスト・ウィッテカー)の撮ってるビデオカメラに映し出された人たち。

 サマランカ市警察官エンリケ(エドゥアルド・ノリエガ)とその恋人ベロニカ(アイレット・ゾラー)、ベロニカが接触するハビエル(エドガー・ラミレス)。

 映画は、中継車の中にあるモニターによって表象されるいくつもの視点と、撮影行為者ハワードによって結びつけられる人たち(ハワードのビデオカメラに収められた人物群と、撮影行為者ハワードと接触する人たち、サムと名乗るスアレス(サイード・タグマウイ)と少女アナ)を基軸に、偶然が織りなす綾を巧みに構成していきます。

 ハワードを介しての人々の偶然の結びつきがなかったら、映画の結末は違ったものになったやもしれません。


 映画「バンテージ・ポイント」、B級映画のクリーン・ヒットです。



投稿者: 今井 政幸


『バンテージ・ポイント』公式サイト




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