第三十四幕 恋空

至高のめぐり逢い  映画「恋空」

 この映画のファーストシーンは、すでに大人となったいまの美嘉が電車に乗って帰郷するシーンからです。

 電車が駅に到着するところで映画は終わります。

 電車の走り行くさまが、これまで美嘉の歩んできた一直線の道程をなぞるかのようにして、美嘉のナレーションで思い起こされ、美嘉とヒロの出会いが語られていきます。

 美嘉のヒロとの出会いは、美嘉にとって異性との初めての出会いであり、初めての恋の体験でした。

 まったく経験のない美嘉に唐突に降って湧いた異性との出会い。

 ヒロの美嘉へのアプローチは自信に満ち大胆です。

 レトリックが光る美嘉のナレーションの心情吐露で、ヒロはまるで川のようと表現され、美嘉の心は一方通行のその激流に流されるままに翻弄され、やがてヒロに惹かれていきます。

 そんな美嘉の前に障害が立ちはだかります。

 障害に徹底的に打ちのめされた美嘉は、体にも心にも深く傷を負い、学校に登校することすら出来ません。

 しかし、ようやくなんとか登校した美嘉を必死に守ろうとするヒロの姿は、美嘉を慰め、美嘉の心を開きます。

 ヒロに愛しく愛される美嘉は、ヒロとの仲を裂こうとする障害に立ち向かっていこうとするまでに強くなっていきます。

 美嘉とヒロとの恋を綴るこの映画は、一方で、家族の結びつきが通奏低音のように奏でられ、家族愛の尊さがアッピールされています。

美 嘉の願いは、家族一緒に暮らしていきたい、ということにありました。

 会社の業績がかんばしくないことから、妻に無断で家を抵当に入れた父の軽率な行為が、信頼関係を裏切り、父と母との夫婦仲に亀裂を生じさせます。

 不穏となった両親のあり様は、美嘉を心を痛めます。

 家庭の基調となる、一番強く結ばれているはずの夫婦関係は、一方で、関係が薄い、まったくの赤の他人の男女の絆から始まってもいるという矛盾を抱えています。

 だから、美嘉から去っていく命たちは、より強く深く、美嘉を家族愛に導きます。

 ヒロへ贈る帽子の編み方をヒロの母から教わる美嘉の幸せ。ヒロと共に時を過ごせる幸せ。

 家庭が与える最高の幸せを、美嘉は、短いながらも、どこからでも美嘉を見守っていることの出来るような「空」でありたい願うヒロから確かに受け取ります。

 たった一度の人生で、美嘉が出会えた、恋する相手との至高のめぐり逢い。


 悲しくも明るい、明るくも悲しい「恋空」、見事です。



投稿者: 今井 政幸


「恋空」公式サイト



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2 Comments

TAKA_1

いつもながら

人を惹き込む素晴らしい解説。真似が出来ない。今年のラストシネマにするかも知れません。

  • 2007/12/23 (Sun) 22:18
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  • 2007/12/24 (Mon) 09:21