第三十二幕 ベオウルフ

鮮やかに蘇った古英語叙事詩  映画「ベオウルフ ―呪われし勇者―」

 授業でその名が出てきたものの、とんと、その書はついぞ見開くことがなかった不勉強者には、いごこちの悪さが残る古英語叙事詩『ベオウルフ』がパフォーマンス・キャプチャーの手法を使って映画化されまれした。

 監督ロバート・ゼメキスは、すでに、「ポーラー・エクスプレス」でパフォーマンス・キャプチャーを取り入れていますが、実写とCGが混在する今回、その評価は二分しました。

 確かに、ロビン・ライト・ペン演じるウィールソー王妃の、CGによる深みのない平坦な顔には驚かされもし、興をそがれます。

 しかし、CGだからこそ、『ベオウルフ』の英雄神話はよりリアルに活写され、それがこの作品の醍醐味です。

 荒れ狂う海をものともせず、賞金目当てに、怪物グレンデルを倒すため、デンマークのとある王国についたベオウルフの冒険譚が物語の骨子です。

 鎧も武器も使わず、怪物グレンデルが素手なら、彼も生身で戦う、恐れ知らずの勇者ベオウルフは、かつて、海中の怪物とも戦い、幾匹も倒したつわものです。

 彼の並外れた強さは、また、怪物グレンデルの母(アンジェリーナ・ジョリー)が、彼の王としての資質、彼の中に潜む怪物性をも見抜くこととなり、彼に不死と王国を約束することで、その蠱惑さで妖しく彼を誘いこみます。

 低学年向きでは決してない、おおらかさと同居している性的奔放さの描写は、原初の人たちが怪物と棲む同居時代、死と絶えず隣り合わせの生活環境の中で、生命の維持継続が一義とされた神話世界を垣間見させてくれます。

 英雄譚は、怪物倒しのエピソードで綴られるのですが、荒唐無稽なその冒険譚は、当時の人々には本当に存在するとも思われた怪物がもたらす厄災に人々がいかに勇敢果敢に立ち向かって、打ち勝ってきたかの人間讃歌でもあります。

 怪物グレンデルを怒らし惨劇を生むこととなる、前段での祝宴の館での、フロースガール王の、韻に富んだ讃歌での酒宴は、恐れをものともしない勇気ある英雄こそが、王の地位に就き、人々の平和を保証し、人々からの賞賛を得てきた有様を十分に窺わせます。

 海の怪物、グレンデル、ドラゴンとに立ち向かった不死の王ベオウルフにもやがて老いが忍び寄ります。
 
 映画は、原作にはない、グレンデルの母に誘惑されたベオウルフの呪われし罪として、ベイオルフの命運を描いてはいますが、怪物と戦い、人々に平和を与えた英雄の名が、尽きることなく後生に長く語り継がれるだろうことは、重厚で鄭重な、印象に残る野辺の夕日の海のシーンに見事に表現されていて哀愁を誘います。

 こんな物語なら授業で勉強しとけば良かったとも思わせるかもしれない鮮やかに蘇った古英語叙事詩「ベオウルフ ―呪われし勇者―」、見ても損はない。



投稿者: 今井 政幸


「ベオウルフ ―呪われし勇者―」公式サイト


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