バザー (ショート・ストーリー)

今日は、弟の学校の学園祭の日である。

 
 学校のどこかには弟の下手くそな作品が飾られているはずだが、あいにく、あたしはそんなもの見たいともなんとも思わない。

 
 あたしは脇目もふらずに 「不用品バザー会場」 に飛び込み、お値打ち品を買いあさった。

 ブランド物のゴージャスな洋食器セットが三百円。果物の缶詰の特大詰め合わせが百五十円。サラダ油のジャンボペットボトル、五十円。それと、ドラゴンの形をした卓上型ライターが十円。

 この竜ライター、ちょっと古いけど太陽に向かって吠えそうな感じでなかなかカッコいい。













投稿者:クロノイチ

 

 我ながらいい買い物をしたと思う。何しろこれだけ買ったのに五百十円しか使っていない。欲しかったものがタダ同然で買えて、大儲けした気分。

 しかし、重い。重過ぎる。スネイク、じゃなかったヘビィである。その上やたらと嵩張る。こんなものをずっと抱えたまま、校内を回らなければならないのか? 気分まで重くなる。コインロッカーに入れたいが、この学校にそんな気の利いたものはない。

 仕方がない。弟を捜し出して少し荷物を預かってもらおう。

 
 あたしは弟の教室に行った。── あれ、いない。だけど人はいっぱいいる。知っている生徒は一人もいなかったが、作品を見て回っている大人の中には、見知った顏も結構あった。荷物を抱えているあたしは目立ちまくりだ。もう、お辞儀しまくり。

 あ、ご近所の田中さんに笑われた。いかん。皆さん、荷物の体積で買い物を判断しないでほしい。品数はたったの四点なんだから。

 このままでは大恥をかいてしまうような気がしたので、仕方なく家に帰ることにする。荷物の重さに耐えかねてタクシーを呼んだ。五百十円の物を運ぶのに千五百円も使ってしまうとは、なんという無駄遣い。これも一種の 「安物買いの銭失い」 といえるかもしれない。

 数時間後、弟が帰って来るなりこう言った。

「姉ちゃん、バザーで爆買いしたんだって?」

「誰から聞いたの、その話」

「クラスの連中だよ。デカい荷物抱えてフウフウ言ってたそうだな。話の内容から姉ちゃんだとすぐわかったよ」

「あんたがその場にいたら、何の問題もなかったのよ」

 あたしがなじるように言うと、弟は申し訳なさそうな顔をした。

「すまん。 ホントのこと言うと、隠れてたんだ。姉ちゃんの家族だとバレるのが嫌でな」

「なんでよ」

「だって、クラスの連中、姉ちゃんのこと陰でコソコソと 『バザーファッカー』 とか 『鬼バザー』 とか言ってるんだぜ。恥ずかしくて出て行けないぜ」

 
 その夜、あたしは悔しくて寝られなかった。

「たった四品で夜も眠れず」。


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