十円玉 (ショート・ストーリー)

小遣いを使い果たしてしまった。財布には十円玉が一個だけ。


 今朝、姉ちゃんに千円借りようとしたが断られてしまった。 「そんな金、ありませんえん」 だとさ。


 頭の中に 「一番星見つけた」の歌が鳴り響く。

 ただし、歌詞は 「一文無し見つけた」 に置き換わっていた。 まだ十円あるのに。


 そうだ。 「もう十円しかない」 と思うんじゃない。 「まだ十円ある」 と思うんだ。

 そうすれば ……












投稿者:クロノイチ


 ── そうすれば、どうなるっつーの?

 「もうダメだぁ」 って状況は全然変わらねえじゃないか。

 おかしいな。プラス思考ってやづは凄くいいことのはずなんだがな。

 もしやコップの中のジュースが半分になった状態でしか、成り立たない理屈なのか?

 
 まあ、十円ぽっち持っていてもどうにもならないので、俺は近くの神社に立ち寄って賽銭箱に投入した。

 願わくはこの十円が百倍になって戻ってきますように。


 家に帰ると、姉ちゃんが 「気が向いたから」 と言って、俺に四百円貸してくれた。ありがたい。

 図に乗って 「返さなきゃダメか」 と聞くと、「あたしはウエストがスリムだから」 と言って、取り合ってくれなかった。

 言いたいことはわかる。 要するに、自分は 「太っ腹」 じゃないってことだ。

 
 ともあれ、百倍にはならなかったが、四百円は充分にありがたい。

 自販機でペットボトルのコーラが二本買えて、おつりが来る。

 さっきの賽銭の御利益に違いない。財布の小銭入れを覗くと、百円玉が四枚、燦然と輝いている。

 
 あの神社、「財布には コウカ 有り」 ってとこかな。

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