風呂 (ショート・ストーリー)

息子と一緒に風呂に入る。


 湯船にはビニールのアヒルやら水鉄砲やら、遊び道具がいっぱい浮かんでいて、僕が手足を伸ばすスペースがない。
 

 いいのだ。息子が喜んでさえくれれば。このおもちゃに気を取られて、少しでも長くお湯に浸かっていてくれるのあれば。
 
 でも、結局息子の風呂嫌いは治らない。

 早々に湯船を飛び出し、洗い場で遊び始める。












投稿者:クロノイチ


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しかたがない。身体を洗ってやろう。
 
 息子に一人で自分の身体を洗わせた後、丁寧に隅々まで洗ってやる。

「今度はパパの背中を洗ってくれ」

  僕がそう言うと、息子は、

「うん、いいよ」

 と答え、クジラの形をした自分専用のスポンジで、「うんしょ、うんしょ」と僕の背中をこすり始めた。

「ああ、なかなか力が入ってるな」

「ボク、強くなったでしょ」
 
 息子は得意気である。
 
 クジラのスポンジは泡立ちもよく、しっかりと背中の垢を落としてくれそうだ。
 
 そういえはこのスポンジ、僕が買ってあげたんだった。

「このスポンジ、気に入ってるか?」

「うん。名前も付けて大事にしてる」

「へえー。なんていう名前?」

 すると息子ははにかんだように笑い、こう言ったのである。


「── ナガスクジラ



 さて、今回のテーマは 「ほのぼの」 です。

 何かテーマを決めると、ものの数秒で勝手にネタが降りてくるのは不思議な感じがします。

 ただ、それと出来の良さとは別の話で、、、

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