タネをまこう (詩)

"タネをまこう" Photo by Nao 撮影場所:奈良県 東吉野村
タネをまこう
こころの大地に タネをまこう
花でも 野菜でも なんでもいいから
タネをまこう
こころの中には
腐ったものや 悪いものや 汚いものもあるけれど
全部まとめて 肥料にしちゃえ
そうして変わったこころの大地に
フワフワとやわらかくて 栄養がたっぷりの
こころの大地にタネをまこう
きっと きっと
みんながおどろくほどの 収穫があるからさ
だからタネをまこう
こころの大地にタネをまこう
大根のタネを蒔く前の 村の一角にて
投稿者:Nao
(初出:2007/12/11)
[編集長-思い出 と これから]
8年前の今日、Naoさんは古民家再生中の廃屋 → Menu:47 東吉野 DASH!村」[Anthony's CAFE] の横にある僅かばかりのスペースに大根の種を蒔いた。
このスペースは、もともとゴミ置き場のような場所で、数十年前の先住者か近所の人が大量のプラスチックだとかビニール・シートだとかを埋めていた。
さすが工業製品だ。30年経っても、土中で分解されずに残っていた。
既に家の裏山に続く斜面には段々畑があり、そこに果樹や芋を植えていたのだけれど、Naoさんは、どうしてこの汚染されたようなスペースを畑にしたいと言い出した。
僕はこの雑草も生えない畳3枚分弱のスペースに、どうせ土地が酸性化してるだろうからと大量の炭の燃えカスを混ぜて、翌年の春の種蒔きに備えていた。
しっかし、Naoさんは雪が降り出してきて冷えてきたその日に、僕や他の者の反対を押し切り、完全に種を蒔く時期を無視して強引にホーム・センターで買ってきた大根の種を蒔いた。
肥料も無いままに、春になり芽を出した大根は葉がヒョロヒョロで、人参のような細さだったので味噌汁の具や漬物にしたけれど、あまり美味しくなかった。
家の前でよくバーベキューをやっていたスペースに穴を掘って、野菜のクズや魚の骨なんかの生ゴミを埋めていたのだけれど、そこに捨てた南瓜の種が発芽して、あっというまに南瓜だらけになった。
その南瓜は肥料(といっても生ゴミなのだけれど)満点で、味も満点。夏のバーベキューや天ぷらでも美味しくいただいた。(笑)
Naoさんが大地に蒔いた大根は不作。
そして、Naoさんが 「こころの大地」 に、うつ状態のときに大量に発生した 「被害妄想」 「他者嫌悪」 などを肥料にして蒔いた 「希望」 の種は数年後、何度か発芽はしたけれど、
実をつけることは、無かった。
2012年の夏、
Naoさんの死とともに、彼から譲り受けたその一粒の 「希望」 の種を、僕は自分の 「こころの大地」 に蒔いた。
そして、今度は、僕が 「愛情」 や 「寛容」 を肥料にして、実らせたい。
いつの日にか。。。
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