リスのキララ (童話)
その森にはリンゴやバナナやぶどうや、いーっぱい美味しそうな実がなっていました。
「やぁ、この森は食べ物がたくさんあるぞ。しばらくこの森に住んでみよう。」
キララはさっそく木の上に巣を作りました。
さて、お腹がすいて森に食べ物を探しに行くと、そこには熊さんやライオンさんやサイさん達の乱暴者達がいました。
親分の熊さんが言いました。 「やい、新入り!この森は力の強い者がたくさん食べれるんだぞ。くやしかったら、お前も強くなるんだな。ハッハッハッ」
そう言われても身体の小さなキララはどうすることも出来ません。
いつもみんなの食べ残しの種ばかり食べてます。
今日も日が暮れて巣に帰ってきても、お腹がすいて眠れません。
「あーあ、お腹がすいたなぁ。明日も種ばかりなのかなぁ。」 そう思って、ふと窓の外を見ると、きれいなお月様が出ていました。
キララには何だか、お月様が少し微笑んでいるように見えました。
投稿者:Nao
(初出:2007/07/05)



笑っている日や淋しそうにしている日や泣いている日や、キララはなんだかお月様と気持ちが通じるようになりました。
そんな毎日をすごし、やがてキララはお月様とお話が出来るようになりました。
「ねえ、今日はウサギさんと、お友達になったよ。」 とか、「なんだい、あの熊さんは。いつもいばってばっかり。」 とか。
「毎日、種ばーっかり。たまにはおいしい実も食べたいよー。」 とか。
そんなキララの話を聞いて、お月様は言いました。 「よし、わかった。食べ物をひとりじめしている連中に天罰を与えてあげよう。そのかわり、わしはしばらくキララの前に現れぬぞ。よいな。」
キララはうなずきました。 「ウン、わかった。でも、いつかきっと会いに来てね。約束だよ。」
そして次の日から雨が降り出しました。
雨は降っても降ってもやみません。やがて、いっぱいなっていた森の食べ物もつぎつぎくさりはじめました。
困ったのは熊さんたちです。ところがキララは、こんな時のためにとコツコツと種をためていたのです。
そんなキララの所へ熊さんたちが集まってきました。
「やい、キララ。食べ物を隠してるんだろ!早く俺たちによこせ!」
キララは言いました。 「やだよ!この種は僕が食べたいのをガマンして集めた種だよ。それにこんな少ししかないのに、みんなで食べちゃったらすぐになくなるよ。 それよりこの種を植えてみんなで増やさないかい?」
熊さんは 「そう言ってもなぁ。俺たち、畑の作り方なんて知らないもんなぁ。」
キララは 「大丈夫。僕、知ってるよ。だからみんな手伝ってよ。みんなで食べ物を作ろうよ。」
熊さんは 「よし、わかった。キララの言う通りだ。みんなで畑を作ろう。」
すると、どうした事でしょう。空をおおっていた雲がみるみる晴れてきました。
そしてみんなが協力をしあい畑作りが始まりました。
力持ちは畑をたがやします。足の速い者はとなりの森までみんなの食べ物をとりに行きます。
心の優しい者は種をまきます。
そうして、みんなで力を出しあったその年、おどろく程の食べ物が出来ました。
そして、初めての収穫をみんなで分け合った夜、キララが空を見上げると、お月様がニッコリ微笑んでました。
おしまい。
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