第二十六幕 キングダム 見えざる敵

怨嗟の連鎖反応      映画「キングダム 見えざる敵」

 サウジアラビアにある石油会社の外国人居住区で起こった大がかりな爆弾テロ。

 死傷者300人をこえる犠牲者の中に、FBI捜査官が含まれていました。

 友人の死に悲しむジェニファー・ガーナーに声をかけ慰めるジェイミー・フォックス。

 彼は、一度は拒否された、FBIによる現地捜査協力を、無理に、実現させます。捜査期間はたった5日間という条件で。

 外交圧力によって現地に乗り込んできたFBI捜査陣は、生命の安全すら保証出来ない、サウジ当局にとってはただのやっかいものです。

 ジェイミー・フォックスらにとっては、仲間も殺された痛ましい大がかりな爆弾テロ。意地でも犯人の検挙は譲れません。

 志願した捜査チーム4人の中に、友人の死を嘆く女性を挿入することで、さりげなく、サウジと米国、両国の文化の違いがことさら際だつよう描かれることになります。

 サウジ王子の招待を受けた、謁見の場に、女性は同行が許されることはありません。


 謁見の場で、王子に願いでた捜査協力を王子が了承したことと、当局とFBI捜査陣との間で、FBI捜査陣の応対要員についた、警官仲間を殺され、自身も犯人を検挙したい、サウジ国家警察官アシュラフ・バルフムの粘り強い説得交渉のおかげで、捜査に非協力的な当局も、しぶしぶ、FBIに制限範囲を解除していきます。

 爆発物専門家クリス・クーパーは、爆発は、救急車が使われたことをつきとめ、法医学調査官ジェニファー・ガーナーは、死体に食い込んでいる不思議なガラス破片に気づきます。

 「映画の中では、政治的にニュートラルであろうと心掛けた。悪役がいるとすれば、それは暴力的な過激主義の者たちだ。

 この映画では、アメリカ人とアラブ人が礼儀正しく人間的な方法で協力し合う点を描きたかった」とは監督の弁です。

 インディアンを一方的に悪者に仕立てあげた時代はとうに昔の話ではありますが、しかし、いまだなおアメリカのその精神構造に変わりはありません。

 映画は、爆弾テロの卑劣さと凄まじさを生々しく描き出します。あの9.11の再現イメージでもありましょう。

 事件の悲しみと怒りが、FBI捜査陣を現地にまで駆り立てるのですが、それは、犯人検挙というより、犯人を皆殺しにしてやりたい、という本音が隠されてもいます。

 しかし、その怨みと怒りは、やがて、理不尽ながらも、同等、同質に犯人側にも連鎖して同じく怒りを生むのです。

 ど派手満載、B級アクション映画のこの映画が、根の部分で、しっかと立つ核心部は、なんとか怨みの連鎖を喰い止めたいとする、崇高な思想です。

 ラストで明かされる、意外なセリフは、決して、爆弾テロに憤るFBIが正義でもないことを伺わせます。


 怨嗟の連鎖をどうにか喰い止めたい熱い想いが言外に伝わる、「キングダム 見えざる敵」、ブラボーです。



投稿者: 今井 政幸


「キングダム 見えざる敵」公式サイト






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