第十幕 300
エンディングロールタイトルに飛び散る赤い飛沫。
デフォルメされたイメージが持つ奇妙な実在感。
原作のグラフィック・ノベルが誌面から実写に置き換えられたとき、われわれが受けるショッキングな感覚、感情、これがこの映画の生命です。
かつて、本当にあった史実をもとに、果敢に300人の少数でペルシャの大軍に立ち向かったスパルタの王と兵士たちの物語は、しかし、当時、してるはずもないピアスでペルシャ側を統一的に描き、その虚飾性、偶像崇拝、神秘主義を表象します。
村人の死体が括り付けられた木、石とペルシャ兵士の死体で作られた壁、防衛壁用に堆く積まれたペルシャ兵士の死体の豊潤なイメージは、失敗作ともいえるような、不死部隊、怪力男、巨大ゾウ、巨大サイの貧弱なイメージを補って余りあり、グラフイック・ノベルの映像化新時代の到来を告げています。
このエポックメーキングな映画は、だから、我々の感覚、感情を昂ぶらすイメージをどれほど提供出来るかにその成否がかかっているのですが、その役を無事に果たしたのは、グラフィック・ノベル的な画面ではなく、むしろ、従来の映像で描かれた、オラクル(託宣者)のエロチックな場面であり、いくさの様子を伝えるために一人スパルタに帰ったデリオスと王妃が出会う、豊かに実った麦の穂の揺らぐ画面であったのは皮肉です。
叙事詩ふうに全編に語られるナレーションは、やがて、語り部が画面に登場し、ラスト、ペルシャの大軍の前にし、数では劣るギリシャ兵を鼓舞しますが、この時、あなたの心に中に、ある種の感動と昂ぶる感情が生まれたなら、それはとりもなおさずポップアートが爆裂するこのB級怪作映画に魅せられた証左でしょう。
投稿者: 今井 政幸
→ 「300」公式サイト
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