告白 3

俺はホットドッグのケチャップの垂れたのを拭うふりをして、その記事をやや大きめに千切り取った。


 隣の鬱陶しい塊はとうに消えて店内は静かになっていた。この店にクラシックが流れている事がようやく確認できる。

 「ジムノペティ…か、これじゃ聞こえへんわ…」 俺は独り呟いた。

 小さな黒い箱の中で、サティが厄介払いをした嬉しさを少し現していた。

 俺はサティに別れを告げ店を出た。


 これといった用があるわけではない。誘われるように斜め向かいのパチンコ屋へ俺は入る。

 一年余り、ほぼ毎日来る俺を顔だけはお互いに見知っている若い店員達が、俺を会釈と微笑で迎える。

 別にこの店が、特別に出玉が良いわけではない。ただ、全員が気持ち良く接客しているからだ。

 慇懃に愛想が良いわけではないが、それで充分なのだと思う。


 果して先の塊どもも居た。

 頭の悪い豚どもは、必死に集積回路と液晶画面に怪しげな念を送ろうとしている。

 神仏の如く拝んで居たかと思えば、今度は親の敵の如く台を殴る。

 「押せ」 と書いてあるのだ、叩くなキチガイめ。拳を振り上げ殴っても、いや、ボタンなぞ押さなくとも当たり外れは変わらないのだ、実際。

 このホールの台にボタンが作動しない物が多いのは、総てこの低脳共の仕業である。


 空いた台に座ると、先の豚の一人が左に座っていた。

 老いさらばえた顔に、霊感で馴染みの某女装歌手の如き化粧と、何の糞を調合すればそれになるのかと問いたくなる香水の強烈な臭いに、嘔吐しそうになる。

 もう既にだいぶ投資しているのか、猩々の様な顔つきでまたもや台を殴っている。

 俺は一瞥し、千円札を投入すると悠然と煙草に火を点けた。

 スロットがたった4回廻って、早くも俺の台は大当たりだ。隣の元豚の猩々は苦々しく此方を見ている。
 
 俺は眼だけ左に向け、口角だけで微笑んでやる。何だか最近は千円以上使った記憶がない。

 あっという間に、俺の背後に箱が七つ八つ積み上げられていく。隣が入れた札が、そのまま俺の台から出ているのではという錯覚を起こしそうになるが、隣の猩々は錯覚に既に囚われているようだ。

 鬼の形相で俺と箱の塔を見ている。おいおい、牛鬼は知ってるが豚鬼てぇ妖怪は知らないぞ。

 さっさと見切りを付け席を立つ。店員に 「叩いて出たら世話ないよなぁ」 と、軽口を聞きながら。


 部屋に帰り、先ほどの紙片を改めてじっくりと読む。

 どうやら西淀川の死体は、俺と関係ないようだ。所持品から菅原九里子57才、住所は不定と書かれている。

 「なんだ…女か…」

 また独りごちてしまった。独り暮らしも数年、独白がすっかり癖になってしまったらしい。

 あれから一週間、俺が棄てた死体は何処へ行ってしまったのか?

 もはや淀川から大阪湾に流れたか、それとも川底に沈んでいるのだろうか。

 
 まあいい。

 俺は、不必要な情報を丸めて捨てた。




投稿者: ぐっちゃん


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