第17回 派遣社員

A建設子会社であるB道路監督のO君と設備のサブコンの監督と私の3人で、喫煙場所で雑談していた時だった。
職人たちは、基本的に10時と3時の休憩時間と、12時の昼しか喫煙ができないのだが、現場管理の我々はある程度自由がきく。
夜は遅いけれども。
最初は外構工事と、屋外給排水工事の日程調整で、打ち合わせてたのだが、それがすむとタバコを吸いながらの雑談となったのだ。
私やサブコンの監督は、北海道から来たO君が珍しいので、いつしか北海道のことや、B道路のことを尋ねるといった感じになった。
そして、O君が、「自分は、B道路のこと、あまりよく良く知らないんですよ。」と言い出し、
我々が、「えっ、自分の会社なのに、なんで?」
と尋ねると、O君は、「実は自分、派遣社員なんですよ。」と言い、さらに続けた。
「本当は、B道路から派遣であるということは、黙ってるように言われてるんですよね。」
「へーえ、そうなんだ。いやー、実は私もA建設に派遣できてるんだよ。」と私。
すると、サブコンの設備の監督が、「実は僕も派遣なんよ。」と言った時、3人とも笑った。
なんということはない。
3人とも、派遣社員だったのである。
それぞれの建設会社の制服を着て、その会社の人間のふりをして仕事をしている。
それぞれが、それぞれの会社から、派遣ということを内緒にしてろと言われて。
なんだかバカバカしいことのようだが、これは大事なことなのだろう。
建前として。
元請、下請けの世界では。
ゼネコンの現場では、こういう雇用形態が意外と多いのだそうだ。
現場の方はクレームという名の変更工事を終えて、仕上げ工事が進んでいた。
もうじき現場も完成する。
そして、あのにっくき三代様の完了検査が近づいた。
完了検査には、当代の教祖、二代様も検査に同行してくる。
そのときは、迫っていたのである。
投稿者: 山口ジジイ
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