下男日記 (2) 下男の始まり

ケーブルカーに乗り込むべく切符売り場を探す。 閑散とした入り口には、人っ子一人いない。
案内図には大人350円とあるが、どこで切符を買えばいいのだろう。
仕方なしに無人の改札を通ると、右手に事務所がある。声をかけてみるとGパン姿の女性が出てきた。制服ではなく私服である。
が、それはそれで中々色っぽい。歳の頃から、およそ50手前だろうか。
それはともかく、運賃を支払いケーブルカーに乗り込む。客はやはり私一人だ。
改札の切符売り場の女性によると、発射まで後10分、、、、。では無く発車までお待ち下さいとのこと。
所在なく待つ事10分。やがてイク時間が訪れ私一人を乗せたケーブルカーが発車する。
切符売り場の女性が手動で扉を閉める。と、同時に 「ガクン」 とケーブルカーは発車した。
心もとないケーブル体験だ。ブルンブルンとケーブルカーは揺れる。
案内版を見ると、昭和三年着工のケーブルカーらしい。淋しさは更につもるばかりだ。
そんな不安をよそにケーブルカーはようやく山上駅に到着した。やれやれだ。
しかし、目指す旅館まではここから歩かねばならない。

秋のつるべおとしの季節だ。町の山門をくぐる頃にはすっかり暗くなっていた。
そして肩に食い込む荷物が辛くなっていたその時、ようやく目指す旅館が見えてきた。
働きに来た身分ゆえに玄関から入るのは失礼かと思い、勝手口を探すが見当たらない。
仕方なく勇気を出して正面玄関から入ると、女将さんが 「naoさんですねー。どうぞどうぞ」 と喫茶に招かれコーヒーを出していただく。
しばらく世間話をして、いよいよ仕事内容だ。分かってはいたが、つまり、部屋掃除、トイレ掃除、風呂掃除、洗い場、お茶出し、布団敷き、布団上げ、その他、掃除掃除掃除。
つまりは、女性なら女中。
私は男だから下男(げなん)だ。
一通り仕事内容の説明を受け、翌日から早速仕事だ。
明日はお客さんが少ないから2時半に出てくれとの事。
よかった。鬱で寝たきりだった私にとっては好スタートだ。
その後、女将さんの指示で下男Bさんに寮へと案内される。階段を下に下にとついて行く。
そして案内された部屋は窓の無い部屋であった。
直感的に私はこの部屋を「穴蔵」だと感じた。
私の人生は穴蔵からの再スタートだ。
穴蔵で荷物をほどいていると、やおらインターフォンが鳴った。
取ってみると 「明日、朝の7時にフロントに来て」 だと。
とにもかくにも私の下男生活はこうしてスタートした。
投稿者: Nao
[編集長-ひとこと]
下男生活スタートだね。それも、昼二時半スタートから、イキナリにも朝7時に変更だ~。
この後、いったい、どうなるんだ~?
ちなみに、大阪の商家では女中さんの男版といえば、丁稚(でっち)になる。
下男(げなん)といえば、下女(げじょ)・・・つまりは、下僕、召使、になる==
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