第11回 主任の答え

現場事務所では、いつものごとく無愛想な面構えで主任がいた。
私は彼に、
「主任、業者に聞いたんですが、K県の現場では、完成後にエレベーターをつけったって。本当ですか。」 と、聞いた。
主任は無愛想なまま、
「ええ、本当ですねえ。エスカレーターは、構造的に入らないので、妥協点としてエレベーターをつけたそうです。」
私は、
「すごいことをいう施主ですねえ。無茶苦茶だあ。」
それに対し主任は、このように説明した。
「そうなんだけど。うち(A建設)は、真理の鏡(仮名)から独占的に工事をやらしてもらってるんで、強く否定できないみたいなんだよ。」
その後、主任はニヤリと笑って、
「実はK県の現場監督を、この現場に呼ぼうという話があったんだ。特殊な現場なんで慣れた人がいいだろうと、上の方が判断したんだよ。ところがK県のその担当だった現場監督は、断ったんだ。その断り方がねえ・・・・。」
そこで、主任は一呼吸間を置いて、身を乗り出し、
「K県の監督は、お願いします、なんでもやります。夜間の現場でも、休み無しでもいい。頼みますから真理の鏡(仮名)の現場だけは勘弁してください。そういって断ってきたんだ。」
そこまで言って笑った。
私も、声を出して笑った。現場主任の言い方が可笑しかったからだ。
しばしのち、
「うーむ、ここは大変な現場ですね。」
私が言うと、二人とも黙り込んでしまった。
明日は、わが身。我々は同じことを考えていた。
この後この現場は、予想外と言うか予想通りというか、異常な現場となっていく・・・
投稿者: 山口ジジイ
[人気blogランキング] ←クリック投票に協力して下さいませっ!
[FC2 blogランキング] ← こちらもクリックお願いしますっ!
- 関連記事
-
-
第13回 三代様ご到着 2008/10/31
-
第12回 真理の鏡教団(仮名) 三代様 2008/10/24
-
第11回 主任の答え 2008/10/10
-
第10回 な、なにーーーー 2008/10/03
-
第9回 酢豚定食 2008/09/26
-


