第六十六幕 落下の王国
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飛翔への夢 映画 『落下の王国』

原題が THE FALL のこの映画は、1981年のブルガリア映画 『YO HO HO』 から着想を得ています。
『YO HO HO』 は、背骨を折って入院している俳優が、同じ病院に入院している10歳の少年と友達になり、少年を使って自殺するための毒を手に入れようとするが、少年に友情を感じたことから、俳優は人生を信じる気持ちを取り戻す、というお話の映画です。
ターセム・シン 監督は、この設定をベースに、落下(THE FALL)を描きます。
『落下の王国』 の俳優ロイ・ウォーカー(リー・ペイス)はスタントマンでした。
彼は、映画(といっても、この映画の時代設定は1915年、無声映画の頃のお話です。)の撮影で、橋から飛び降りるシーンで、大怪我をして病院に担ぎ込まれました。
みかん農園で、みかんをもぎ取ろうとして木から落ちた5歳の女の子アレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)が、彼女に優しくしてくれる看護師エヴリン(ジャスティン・ワデル)に、メッセージを書いた手紙を、二階の窓から、投げ落としたとした時、手紙は、エヴリンに届かず、ロイのベッドにと落ちてきました。
手紙を探してロイの病室へとやってきたアレクサンドリアは、ロイから手紙を取り返して立ち去ろうとしますが、ロイが呼び止めます。
「君の名前は、アレクサンドリア?」
「そうよ。」
「アレキサンダー大王にちなんだ名だね。」 「僕は、ロイ。」
「・・・」
「こっちにおいで。アレキサンダー大王の話をしてあげよう。」
映画の主役シンクレア(ダニエル・カルタジローン)に恋人を奪われたこともあって、ロイは、つま先の感覚すら無くなったこの大怪我の状態の中で、自殺を考えてもいました。
自殺の方法は、薬錠を大量に飲み込むこと。
偶然まいこんだアレクサンドリアは、身動きの出来ないロイにとって、格好の手足でもありました。
ロイが話してくれるアレキサンダー大王のお話に聞き入るアレクサンドリアでしたが、しかし、そのお話は、アレクサンドリアには好きになりません。
「明日、別の話をしてあげる。愛と復讐の叙事詩だ。叙事詩って分かる?」
翌日、物語を聞こうと、ロイの病室にやってくるアレクサンドレアがいました。
「じゃ、目を閉じて。」 「何か見える?」
「ううん」
「目をこすってごらん。星が見えるよ。」
目をこすったアレクサンドリアの瞼の裏に、満天の星空が広がりました。・・・
総統オウディアス(=シンクレア)に復讐を誓う、黒山賊(=ロイ)、ルイジ(=ロイの俳優仲間:ロビン・スミス)、インド人(=オレンジ農園の使用人:ジートゥー・ヴァーマー)、チャールズ・ダーウィン(=病院職員:レオ・ビル)、オッダ・ベンガ(=氷配達員:マーカス・ヴェズリー)の5人は、総統に怒りをかったことで閉じこめられた珊瑚礁の小さな島から脱出し、霊者(=オレンジ農園の使用人:ジュリアン・ブリーチ)に出会い、霊者の卓越した霊能力に救われながら、出会ったエヴリン姫(=看護師エヴリン)に黒山賊は恋に落ちるという、ロイの語る、愛と復讐の叙事詩は、ロケ地を各国の世界遺産として、ターセム監督の前作 『セル』 同様、コスチューム・デザインに 石岡 瑛子 を迎えての美がわたしたちを挑発します。
なつかしい無声映画の数々の落下シーンで閉めくられるこの映画は、観客の笑いをとるために危険も省みず、体を張って命がけなシーンに挑戦したスタントマンたちに捧げられたオマージュでもあります。
わたしたちが、息をのみ、スクリーンに目を釘付けにした、落下の名シーンは、落ちることと同時に、希少な蝶を求めて手を伸ばした猿のウォレスの姿にも似て、映画の中に、夢と希望を追い求めた、飛翔への夢でもありましょう。
世界は美しく、生きてくだけの価値がある。
ロイに言われるがままに、調剤室に忍び込んで、モルヒネの瓶を取ろうと足を滑らせ、棚から落ち、頭を強打した、アレクサンドリアのひたむきさは、やがて、自殺だけを考えていたロイの心を変えていくのでした。
飛翔を夢見る落下たちの物語。映画「落下の王国」、ブラボーな一作です。
投稿者: 今井 政幸
→ 『落下の王国』 公式サイト
ターセム・シン 監督の初長編作品 『ザ・セル』 も見逃さずにチェックだ!
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原題が THE FALL のこの映画は、1981年のブルガリア映画 『YO HO HO』 から着想を得ています。
『YO HO HO』 は、背骨を折って入院している俳優が、同じ病院に入院している10歳の少年と友達になり、少年を使って自殺するための毒を手に入れようとするが、少年に友情を感じたことから、俳優は人生を信じる気持ちを取り戻す、というお話の映画です。
ターセム・シン 監督は、この設定をベースに、落下(THE FALL)を描きます。
『落下の王国』 の俳優ロイ・ウォーカー(リー・ペイス)はスタントマンでした。
彼は、映画(といっても、この映画の時代設定は1915年、無声映画の頃のお話です。)の撮影で、橋から飛び降りるシーンで、大怪我をして病院に担ぎ込まれました。
みかん農園で、みかんをもぎ取ろうとして木から落ちた5歳の女の子アレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)が、彼女に優しくしてくれる看護師エヴリン(ジャスティン・ワデル)に、メッセージを書いた手紙を、二階の窓から、投げ落としたとした時、手紙は、エヴリンに届かず、ロイのベッドにと落ちてきました。
手紙を探してロイの病室へとやってきたアレクサンドリアは、ロイから手紙を取り返して立ち去ろうとしますが、ロイが呼び止めます。
「君の名前は、アレクサンドリア?」
「そうよ。」
「アレキサンダー大王にちなんだ名だね。」 「僕は、ロイ。」
「・・・」
「こっちにおいで。アレキサンダー大王の話をしてあげよう。」
映画の主役シンクレア(ダニエル・カルタジローン)に恋人を奪われたこともあって、ロイは、つま先の感覚すら無くなったこの大怪我の状態の中で、自殺を考えてもいました。
自殺の方法は、薬錠を大量に飲み込むこと。
偶然まいこんだアレクサンドリアは、身動きの出来ないロイにとって、格好の手足でもありました。
ロイが話してくれるアレキサンダー大王のお話に聞き入るアレクサンドリアでしたが、しかし、そのお話は、アレクサンドリアには好きになりません。
「明日、別の話をしてあげる。愛と復讐の叙事詩だ。叙事詩って分かる?」
翌日、物語を聞こうと、ロイの病室にやってくるアレクサンドレアがいました。
「じゃ、目を閉じて。」 「何か見える?」
「ううん」
「目をこすってごらん。星が見えるよ。」
目をこすったアレクサンドリアの瞼の裏に、満天の星空が広がりました。・・・
総統オウディアス(=シンクレア)に復讐を誓う、黒山賊(=ロイ)、ルイジ(=ロイの俳優仲間:ロビン・スミス)、インド人(=オレンジ農園の使用人:ジートゥー・ヴァーマー)、チャールズ・ダーウィン(=病院職員:レオ・ビル)、オッダ・ベンガ(=氷配達員:マーカス・ヴェズリー)の5人は、総統に怒りをかったことで閉じこめられた珊瑚礁の小さな島から脱出し、霊者(=オレンジ農園の使用人:ジュリアン・ブリーチ)に出会い、霊者の卓越した霊能力に救われながら、出会ったエヴリン姫(=看護師エヴリン)に黒山賊は恋に落ちるという、ロイの語る、愛と復讐の叙事詩は、ロケ地を各国の世界遺産として、ターセム監督の前作 『セル』 同様、コスチューム・デザインに 石岡 瑛子 を迎えての美がわたしたちを挑発します。
なつかしい無声映画の数々の落下シーンで閉めくられるこの映画は、観客の笑いをとるために危険も省みず、体を張って命がけなシーンに挑戦したスタントマンたちに捧げられたオマージュでもあります。
わたしたちが、息をのみ、スクリーンに目を釘付けにした、落下の名シーンは、落ちることと同時に、希少な蝶を求めて手を伸ばした猿のウォレスの姿にも似て、映画の中に、夢と希望を追い求めた、飛翔への夢でもありましょう。
世界は美しく、生きてくだけの価値がある。
ロイに言われるがままに、調剤室に忍び込んで、モルヒネの瓶を取ろうと足を滑らせ、棚から落ち、頭を強打した、アレクサンドリアのひたむきさは、やがて、自殺だけを考えていたロイの心を変えていくのでした。
飛翔を夢見る落下たちの物語。映画「落下の王国」、ブラボーな一作です。
投稿者: 今井 政幸
→ 『落下の王国』 公式サイト
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