第四十九幕 ブラックサイト

リアルな、インターネット社会への警鐘  映画『ブラックサイト』


『ブラックサイト』 ポスター


 捕まえてきた猫に仕掛けをほどこし、猫の様子をカメラで捉え、ネットで配信する。
 
 一見どこにもありそうなこのサイトが他と違うのは、アクセス数が増えたら、その分、罠が早く働き、ついには、猫を死に至らしめる仕掛けが施されていることだった。

 サイト名は、「killwithme.com」。

 アクセス数の増加によって、猫が死に至らしめられたこのサイトが次に映しだした標的は男性だった。

 縛られ、口をふさがれ、体を固定され身動き出来ない男性の胸は、killwithmeと切り刻まれている。そこには、サイトへのアクセス数の増加に比例して、抗凝血剤液の投与量が増す仕掛けが施されていた。

 事件発覚後、当局の無神経な発表もあって、サイトへのアクセス数はいっきに増加し、やがて、男性は、その一部始終を全世界から見守られ、死をむかえる。

 原題を、Untraceable(追跡不能)とするこの映画は、 インターネットが持つさまざまな利便性を逆手に取り、インターネットがたやすく犯罪に利用されることの危険性を描く共に、ネットの持つ、犯人の追跡不能性、そして、わたし達のネットの閲覧行為が、共犯行為となって、犯罪を促進するという、ネットの悪魔的仕掛けの実体を明かしてくれている。

 killwithme.com の開設者、オーウェンの犯行動機は、ネットの犯罪性を糾弾することであった。

 ネットの犯罪性とは、テレビクルーが偶然見かけカメラに収めた、とある人物の自殺を報じたテレビ画像が、ネットで貼り付けられたことで、自殺者の関係者たるオーウェンの心は深く傷いたのだが、そのオーウェンの傷の痛みを逆撫でするかのように、画像のコピーと貼り付けがあちこちのサイトで繰り返し行われ、いともたやすくに他人の不幸を広く世間に煽るネットの機能、そして、自殺画像を、まるで、楽しむかのように繰り返しサイトにアクセスする無神経な者のアクセス行為だった。

 オーウェンが仕掛けた、アクセス数の増加によって死が早まる、という装置は、実は、ネットの機能の持つ犯罪性と、興味本位の好奇心とか、殺人に荷担したいがためとか、理由はどうあれ、結果的に、killwithme.comにアクセスすることで、人を死に至らしめているネット閲覧者の持つ犯罪性を厳しく諫める装置でもあった。

 しかし、物語は、中途、オーウェンのこの復讐劇、復讐理念から外れ、殺人者オーウェンを追うFBIネット捜査班へ向けられたオーウェンの犯行へと変わる。

 映画は、ネット犯罪を監視するFBIサイバー捜査官ジェニファーを軸に語られている。オーウェンの逸脱した復讐心は、ジェニファーの同僚グリフィンを襲い、やがてジェニファーをも襲う。

 この作品のあちこちに散りばめられた異様な猟奇性がネットの異常さを的確に浮き上がらせてもいるが、復讐心に燃えたオーウェンの癒しがたい心の傷が、FBIサイバー捜査官に向いた本末転倒さから、映画は、B級アクション映画の枠内をついぞ抜け出せなかった。

 ジェニファーが誇らしく、ネット閲覧者に掲げたFBIバッチに、制作者の、閲覧者は物事を正しく判断せよとの願いとメッセージが込められてはいるが、この映画の醍醐味は、繰り返し、繰り返し、オーウェンが標的としたジェニファーの家を、あたかもねめ舐めるかように、カメラが静かにゆっくりパンするシーンにある。

 音も立てず、無言で、ただじっと、繰り返し、ジェニファー家を幾度も写し撮るカメラ。

 これが、オーウェンが、なによりも糾弾せずにはいられなかった、ネット閲覧者が内心に持つ犯罪共犯者の犯罪性の正体そのものであり、映画は、唐突に、音量がアップするシーンを巧みに挿入することで、音も立てず覗き見てる閲覧者を、諫めてもいるのだった。



投稿者: 今井 政幸


『ブラックサイト』 公式サイト



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2 Comments

BC

カメラワーク

はじめまして。
トラックバックありがとうございます。(*^-^*

殺人者オーウェンは何故、復讐理念から外れてFBIへ向けられたのか?
その辺が私もよくわからなかったんですよね。

>オーウェンが標的としたジェニファーの家を、あたかもねめ舐めるかように、カメラが静かにゆっくりパンするシーンにある。

カメラワークは独特でしたね☆

  • 2008/05/02 (Fri) 01:44
今井政幸

殺人者オーウェンは何故、復讐理念から外れてFBIへ向けられたのか?

ジェニファーの子供がダウンロードしたゲームに、オーウェンの仕掛けが施されていて、ジェニファーの動きが、ハッキングしたジェニファーのパソコン内部のデータからすべてオーウェンはお見通しだったから、グリフィンがうすうす感づいていた、自分に迫る捜査の手を前もって封じようとしたから、とは思いますが、ネットの持つ情報収集のたやすさの危険性を描こうとするあまり、偶然性にたよったとも思える、ゲーム好きの子供のするダウンロードわずかな確率さから、捜査陣の手の内を見通せたという設定は感心しませんでした。

  • 2008/05/02 (Fri) 06:32