第四十八幕 つぐない

罪と贖罪       映画 『つぐない』



映画 『つぐない』ポスター



 創作力・想像力が共に旺盛な、タリス家の13歳の少女、ブライオニー(シアーシャ・ローナン)は、じき友達ポール・マーシャル(ベネディクト・カンバーバッチ)を連れて家に帰ってくる兄リーオン(パトリック・ケネディ)に演劇を見せようと、戯曲を執筆中です。

 ブライオニーがふと手を休め、窓の外をみやると、姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)が、タリス家の使用人の息子ロビー・ターナー(ジェームズ・マカヴォイ)の前で、下着姿になって、噴水に飛び込む様子を見てしまいます。咄嗟に、見てはいけないものを見てしまったとブライオニーは慌てて身を隠します。

 使用人の息子ながら、ロビーは、タリス家から奨学金を出してもらい、セシーリアと同窓のケンブリッジに学びました。将来は医学の道をめざしています。

 そんなロビーは、母が磨いていた銀食器が用意されたタレス家の晩餐会に招待されています。

 昼の、セシーリアとのふとしたいさかいの詫びに、ロビーは詫びの手紙を書き、直接セシーリアに手渡せない後ろめたさから、途中であったブライオニーに手紙を託します。

 その手紙の中身は、詫びの文面のとは別に、ロビーが戯れに書いた、セシーリアへの熱烈な性的思いが綴られていたものでした。これを、ブライオニーは、すぐさま、盗み読みしてしまうのでした。

 セシーリアはロビーを好いていて、昼の二人のいさかいも、ロビーのつれない様子に苛立つセシーリアの思いからでした。屋敷で出会った二人は、すぐさま、図書室で、求め合います。

 そんな姉のロビーへの熱い思いを知らないブライオニーは、ロビーがセシーリアと体を重ねている姿を目撃してしまうのでした。

 事件は、そんな中で起きました。

 ライオニー達の従兄弟たち、ローラ・クィンシー(ジュノー・テンプル)や双子の弟たちが、親の離婚が元で、タリス家に引き取られていました。

 タリス家での泊まりも飽きた双子は、両親の元をめざしタリス家から逃げ出します。

 一同が慌てて晩餐を打ち切り、双子を捜索するという騒動のさなか、ローラが何者かによって襲われたのでした。

 偶然、その現場を目撃したブライオニーは、警察に、犯人の名を告げます。ブライオニーが警察に告げた名は、ロビーでした。

 状況証拠に、ロビーの卑猥な手紙も警察に差し出されます。

 ロビーが、ようやく、双子の弟たちを見つけて帰って来たとき、ロビーを待ちかまえていたのは警察でした。

 ブライオニーの偽証によって(後に、ブライオニーは、その場で見た犯人の顔を思い起こすのですが)、ロビーとセシーリアは裂かれました。

 牢獄に送られたロビーは、刑期短縮のため、おりしも始まっていた第二次大戦の戦場の最前線に志願して行ったからです。


 映画は、多感で、想像力たくましいブライオニーの誤解を、同じ場面を、視点を変えて、二度繰り返すことで、ブライオニーの内面の様子をも描くことで説明しています。

 幾度か同じ場面が繰り返えされる技法は、映画全体にも及び、最後の最後、わたすたちは、制作者による、心憎い、ブライオニーの気持ちを代弁する、ロビーとセシーリアへのつぐないを目にします。

 それは、後に作家となったブライオニーがようやく本当に自身で自覚出来た、自分が犯した、取り返しのつかないあやまちへの、せめてものつぐないでもありました。

 噴水に飛び込むセシーリア。川辺で犯されるローラ。ダンケルクで船を待つロビー。ロビーの気を惹こうと川の中に飛び込むブライオニー。海辺の家で戯れるロビーとセシーリア。


 水が、死のイメージを連ねてもいて、贖えきれない罪の重さを暗示する、映画「つぐない」は、味わい深い作品です。



投稿者: 今井 政幸


『つぐない』 公式サイト



アカデミー賞で作曲賞を受賞したサウンド・トラックも要チェック!





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2 Comments

Anthony

僕にとっての英国映画といえば、荒廃した社会やドラッグ、そして階級社会を描いたモノというイメージがありますが、この映画はアカデミー賞作曲賞を受賞したというだけでなく、役者の演技や葛藤なんかにも注目してみたいです。

  • 2008/04/24 (Thu) 12:21
今井政幸

妹ブライオニー役のシアーシャ・ローナンの演技は、アカデミー賞でノミネートされた助演女優賞での演技というより、主演女優賞候補というべきほどの演技力です。

  • 2008/04/24 (Thu) 21:59