Anthony's CAFE 

archive: 2016年10月  1/1

お絵描きをしよう (ショート・ストーリー)

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久しぶりにデッサンの練習をしようと思って、果物と野菜の模型を押し入れから引っ張り出してきた。 オレンジ、リンゴ、バナナ、キューリ、トマト、ゴーヤ、ナスである。  構図を考えながらそれらを一つ一つ器に乗せていると、お邪魔虫の弟がやってきた。「よお、姉ちゃん。それって食えねえの? 本物そっくりなんだが」 そう言って弟がヒョイとゴーヤをつまみ上げる。投稿者:クロノイチ...

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仏教会話

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「いやあ、君も 曹洞(そうとう)、変わり者だね」「何言っ 天台(てんだい)。僕なんて 禅禅(ぜんぜん) だよ」「でも、それ、法華(ホッケ) の刺身だろ?」「あれ、君んとこじゃ、食べないのか? この北海道だと普通にありなんだが。── 君も 空海(くうかい)?」「いや、生ものは前にひどい目に遭ってから、こん 臨済(りんざい) 食べないようにしてるんだ」「最澄(さいちょう) 戦するつもりはないのかい?」「一向(いっ...

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大きいことはいいこと? (ショート・ストーリー)

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たまたまタイミングが悪くて、朝食と昼食を食べそこねてしまった。 俺は大食らいの食いしん坊。午後八時になった今、ひもじくてひもじくてたまらない。 腹の虫が餓死してもはやウンともスンともいわないレベルである。 午後九時。やっと残業が終わった。もう頭の中は食べることだけだ。味は二の次。とにかくガツガツと胃袋に食べ物を詰め込みたい。 だが、俺はその気持ちをグッと抑え、少し離れた店まで車を走らせた。ここには...

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バングル (ショート・ストーリー)

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あたしは汗のニオイが滅法好きだ。 そう断言してしまうとあらぬ誤解を受けそうなので言い直そう。 ── 男子の汗が好きだ。  ああ、この言い方もダメだな。 男子の汗なら何でもいいというわけではないのだ。 どう表現したらいいのだろう。嗅ぐとほのかに甘酸っぱい香りがして、喉の奥がガッと締めつけられるような感じになるやつが好きなのである。投稿者:クロノイチ...

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風呂 (ショート・ストーリー)

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息子と一緒に風呂に入る。 湯船にはビニールのアヒルやら水鉄砲やら、遊び道具がいっぱい浮かんでいて、僕が手足を伸ばすスペースがない。  いいのだ。息子が喜んでさえくれれば。このおもちゃに気を取られて、少しでも長くお湯に浸かっていてくれるのあれば。  でも、結局息子の風呂嫌いは治らない。 早々に湯船を飛び出し、洗い場で遊び始める。投稿者:クロノイチ...

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親孝行 (ショート・ストーリー)

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僕の手は血行が悪いせいか、結構冷たい。 あ、今のは笑いどころじゃないから念のため。  何の心構えもなく僕に触れられた人間は、たいてい背筋をビクッと震わせ、「死人かよ」 と言う。  失敬な。あんた、死人に触られたことがあるのかね。投稿者:クロノイチ...

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