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寂れたスナックで語る物語 第四話 「兄をめぐる物語」
とある寂れたスナック。普通のスナックは軽食や飲み物を出すが、この店は 「マスターが語る物語」 が売り物。そしてお客は、画面を見ているあなた。 いまマスターは仕入れに出ているので、今日は私が仮のマスターを務める。 カウンター上には亜喜夫などにまつわる本が一冊。「これで商いをしなさい、物語が尽きれば店を閉じればいい」 とでも言うのだろう。 私は蝋燭に灯をともし、カウンターの本を手に取ってページをめくった...
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寂れたスナックで語る物語 第三話 「毛髪を無くした物語」
「毛髪を無くした物語」 通りを歩けば路地から少し入った所に散髪屋が見える。古くさい店だ。こんな場所で、しかも寂れた店に客が来るのだろうか? 窓越しに店の中を見てみると案の定、誰もいない。 だが意外にも、店主は女性で若い。 店主に惹かれた葉瑠男はドアを開けて中に入った。「いらっしゃいませ」 と応える店主。 椅子を示されて座るとすぐに好みのヘアスタイルを問われ、さっそく散髪が始まった。投稿者: K.Miyamo...
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寂れたスナックで語る物語 第二話 「時計をめぐる物語」
奈津夫がその店をのぞいたのは気まぐれでしかなかった。 「時計をめぐる物語」 通りを歩いていると路地から少し入った所に時計屋が見える。古くさい店だ。こんな場所で、しかも寂れたような店に客が来るのだろうか? 窓越しに店の中を見てみると案の定、誰もいない。だが意外にも、店主は女性で若かった。 店主に惹かれた奈津夫はドアを開けて、店の中に入った。 時計を修理中だったのか店主は小さなドライバーを持った手を止...
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寂れたスナックで語る物語 第一話 「ある本屋での物語」
とあるさびれたスナック。それもそのはず、蝋燭の灯りだけの店内は薄暗く、陰気な感じがするのか誰も寄り付かない。それでもマスターは、客を迎える準備をしながら、ふと、だれもいない店内の一点に向かい、「そういえば亜喜夫の姿が見えないわね」とつぶやく。ときおり蝋燭が「ジジッ」と音を立てて炎が揺らぎ、そのたびにマスターの陰影が揺らいだ。マスターは「誰かに語りかける」というでもなく、亜喜夫の話を始めた。 亜喜夫...
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野を歩けば 「五倍子粉」(ふしこ)
Photo by K.Miyamoto 撮影場所: 富山県 南砺市 赤祖父池付近野山を歩いていて名前のわからない実のようなものに出会ったのは、2020年、富山県南砺市の赤祖父池付近を歩いていたときだった。 実のようなものを付けた木は3本あり、帰って調べると実ではないと知った。 後日再度出かけて、試しに手の届く所の一個を割って見ると予想通り実のようなものは空洞で、中に羽のある小さな虫が残っていた。 もう一個も … 同じ結果...
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ありゃ 固まった
Photo by K.Miyamoto 撮影場所: 富山県 南砺市 某所のたぬき妖し「国の税金だ、存分に使って月夜の [怪宴] といこうぜ。」「それ騒げ、タヌキの腹鼓だ」「ありゃ騒ぎすぎた。まずい、夜が明ける」投稿者: K.Miyamoto...