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最終回 あとがきです。
いかがでしたでしょうか、「山口ジジイの失業日記の後(あと)」 「失業日記の後(あと)」 は、今回で完結です。 最後まで読んでくれた人に、感謝します。 そもそもの始まりである、「山口ジジイの失業日記」 の記事は、2年前の失業生活を綴ったものですが、なんとか再就職した私が、初出勤したところで完結をむかえてます。 その後、どういう仕事をしていたのか、どういうことを感じたのかをまとめたのが、今回の 「失業...
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第27回 退職
待機期間というのが、数ヶ月あった。 私の派遣先は、なかなか決まらなかったのである。 こういう場合もあると聞いてたので、こんなものかなとも思った。 私は取引先に現場監督を派遣するというこの会社の、正社員ということだったので、待機中でも給与はでた。 ただし、現場手当とか残業手当とかがないので、実質的に手取りは少なくなっていた。 自宅待機で、毎日することがなく、体が鈍った。 会社からの連絡はなく、給与明...
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第26回 送別会
左から主任、(ママさん)、山口ジジイ、B道路O君B道路のO君が北海道に帰ることとなり、送別会をした。 といっても、A建設の主任と私は、B道路に招待された形である。 1次会2次会とB道路が飲ませてくれて、3次会はA建設の経費で飲ませてもらった。 小料理屋の個室から、スナック、キャバクラ、ショットバーといった感じだった。 主任は、B道路のO君に、「あの時は、怒って悪かったなあ。」と、詫びていた。 感情...
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第25回 ネットカフェ役人
落成式も終わり、現場は落ち着いた。 二代様と三代様の落成式で出た最後っ屁のようなクレームも、だいぶ片付いていた。 材料の関係とかで時間がかかるのがあり、物が入れば職人を呼ぶのだが、普段はあまりすることがなくなり、現場事務所で、待機してることが多くなった。 暇なので、現場主任と、私と、子会社B道路の監督と三人で、それぞれ漫画を持ちよっては、読書。一心不乱に回し読み。 パソコンのインターネットもさんざ...
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第24回 おみやげ
落成式の後、真理の鏡教団(仮名)主宰の道後のホテルで催された懇親会に、現場所長は出席した。 私と現場主任は、現場で落成式の片付けをしていた。 夕方現場に帰ってきた所長が、所長 「おーい。お土産もらったぞ。お前たちのもあるぞう。」主任・私「なんですか?」所長 「それが、とにかく重いんだ。これは、なにかとてもいいものだ。」主任・私「なんでしょうねえ。」所長 「高級な置時計か何かだと思う。楽しみ...
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第23回 落成式
山のように残った、クレーム工事を片付け、やっと、現場は完成した。 山のようにあったクレームを、一つ一つ補修した。 自分の手でおこなったものもある。 予定していた落成式の日時に間に合わせることができた。 落成式には、またもや全国から真理の鏡教団(仮名)の信者が3,000人ほど集った。 当日、何十台ものバスで現場に訪れたのである。 もちろん、二代様三代様も飛行機でやってきた。 巫女も6歳の4代様もやっ...
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第22回 現場主任
現場主任はA建設に入社して10年ほどになる若手の現場監督である。 私より年下であるが、私の雇い主にあたる。 今までは誰かの下で現場管理をしていたそうで、この真理の鏡教団(仮名)の現場が、実質的な一人立ちなのだそうだ。 私が慣れ親しんだ住宅の現場ならば、すぐに自分の現場を持たされるので、ゼネコンとの違いがおもしろい。 10年でやっと一人前になるという、なかなかゼネコンの現場は難しいのである。 現場...
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第21回 完了検査の結果
二代様三大様の完了検査は、予想外というか予想通りというか、散々たる結果となった。 またもや、100を超えるクレームが。 造作完了のおりと同じく、訳の分からないクレームが多い。 壁をのけろとか、スイッチの位置が悪いなど。 図面の通りに作ってるのに。 中には、前回の造作完了のとき、気に入らないと変更したドアの位置を、やはり気に入らないと、結局元あった位置に変更する工事さえあったのだ。 どうですか。 ...
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第20回 新興宗教の二代様登場
そのときは一大セレモニーだった 完了検査の日、二代様がやってきた。 当代である。真理の鏡教団(仮名)の教祖様である。 生きる神様、生き神様だ!(信者にとってだけど) 隣国で例えると、K正日にあたるカリスマ性を帯びた人物である。 白のハイヤーで到着した二代様は、我々と1500人の信者の熱い出迎えをうけた。 二代様が左手を軽くあげると、信者の方から、「ぅおおーーーー、二代サマーー!」 という、歓声があ...
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第19回 奉仕作業する信者たち
真理の鏡教団(仮名)の信者が各地から、3日間の奉仕活動に集っていた。 樹木を植えたり、石畳を敷いたり、外構工事の一部を自分たちの手で行うために集ったのである。 地元の信者が1000人、他地域が500人の合計1500人が当日集まった。 地元の信者はいい。 自宅から通ってくるから。 よそから集まった信者たちは、ホテルとか、地元の信者の家とかに泊まる。 いずれでもない、泊まるとこのない信者たちは、現場に...
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第18回 冬山ふたたび
元山男のFさん 野宿ライダーY君(左)と山口ジジイ(右)失業し職業訓練校に通ってたころの友人、野宿ライダーのY君から連絡があった。 とても懐かしかった。 電話で雑談していたが、彼の目的は山登りに行かないかという誘いだった。 「行ってみようか。」 私の返事で、冬山に登ろうということになった。 以前、一緒に冬山に登った3人で。 土曜の昼か...
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第17回 派遣社員
A建設子会社であるB道路監督のO君と設備のサブコンの監督と私の3人で、喫煙場所で雑談していた時だった。 職人たちは、基本的に10時と3時の休憩時間と、12時の昼しか喫煙ができないのだが、現場管理の我々はある程度自由がきく。 夜は遅いけれども。 最初は外構工事と、屋外給排水工事の日程調整で、打ち合わせてたのだが、それがすむとタバコを吸いながらの雑談となったのだ。 私やサブコンの監督は、北海道から来...
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第16回 補修工事
三代様造完検査事件の後、業者にクレームならびに補修工事をさせた。 それまで従順だった業者も、この訳の分からないクレームには、異を唱えた。 業者たちは、職人である。 スーパーゼネコンA建設の仕事を請け負ってる彼らは、プライドが高い。 職人は、ものつくりの仕事をしている。 仕事がまずくて直すなら、彼らは直すが、今回のような訳の分からないクレームは、自分たちが納得できないのだ。 A建設主任と派遣の私とで...
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第15回 三代様の、のろい
もうひとつのおまけは、現場責任者である現場主任が、熱がでたことである。 立会い後、100を越えるクレームをまとめて、皆で段取りなどをしていると、 主任が、「寒い、寒い」 と言い出し、 所長が、「横になれ」 と現場事務所で、横にさせた。 主任が、ブルブル震えてるので、「おい、主任。あとのことは大丈夫だから、もう帰って、寝てなさい」 と所長が言うと、 主任は、「すみません」と、先に帰った。 その夜、主任...
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第14回 4代様号泣事件
造作完了立会いには、おまけがついた。 ひとつは、「4代様号泣事件」 である。 4代様とは、三代様の子供で6歳くらいだ。 マルコメ味噌のようなクリクリの坊主頭に、ゲゲゲの鬼太郎のような、チャンチャンコを着た浮世離れした風情である。 造作完了立会いにこの子もついてきてたのだが、飛行場に着いたとき地元の教団幹部に飛行機の模型をかってもらった。 プレゼントだ。 4代様(6歳)は、そのプレゼントをいたくお...
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第13回 三代様ご到着
造作完了立会いの当日が来た。いよいよ三代様のお目見えである。 みんなで緊張して、お出迎えだ。 飛行場まで迎えに行ってた、A建設の営業マンが運転する黒のクラウンを先導車にして、黒い国産高級車のハイヤーが見えた。 教団ナンバー2の三代目様はこのハイヤーに乗って到着。 その後ろには、幹部信者のハイヤーが続く。 我々は、深々と頭を下げておでむかえした。 「はい!」 というような挨拶代わりの一瞥を、我々に...
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第12回 真理の鏡教団(仮名) 三代様
現場の施主である、宗教法人真理の鏡教団(仮名)は、代々世襲である。 初代は既に亡くなっており、当代は息子である二代目である。 現在の真理の鏡教団(仮名)の、ナンバー2が、二代目の息子の三代様だ。 信者からは、若神様、若、三代目様、などとよばれている。 信者にとっては、当代の二代様と並んで、「神聖にして侵すべからず」、絶対的な存在である。 これを日本の隣国に例えると、 一代目をK日成 一代...
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第11回 主任の答え
現場事務所では、いつものごとく無愛想な面構えで主任がいた。 私は彼に、 「主任、業者に聞いたんですが、K県の現場では、完成後にエレベーターをつけったって。本当ですか。」 と、聞いた。 主任は無愛想なまま、 「ええ、本当ですねえ。エスカレーターは、構造的に入らないので、妥協点としてエレベーターをつけたそうです。」 私は、 「すごいことをいう施主ですねえ。無茶苦茶だあ。」 それに対し主任は、このよう...
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第10回 な、なにーーーー
現場にも少し慣れてきたころ、嫌なうわさを聞いた。 隣のK県の現場が完成したのだが、大変だったというのだ。 K県でも、こちらと同じように真理の鏡礼拝所(仮名)を建設していた。 中年の人相の悪い業者から聞いた。 「真理の鏡(仮名)の施主が検査に来るたびにな、山のようなクレームが出るのよ。それをな、なんとか全部直してな、ああ、やっと終わったー。 と、みんなで安心してると、A建設の監督から連絡があって...
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第9回 酢豚定食
某月某日 闇の中、私は現場事務所にいた。 「時計の針は今1時。」 私は一人つぶやいた。 夜中の1時である。 冬のど真ん中、南国四国とはいえ、外はシンシンと寒い。 今日は、昼間に現場の 「土間コンクリート」 をうったのだ。 ご存知かもしれないが、土間コンをうった後には、左官の手で押さえという作業を行わなくてはならない。 この作業は、ある程度コンクリートが固まってからも、数回行なわねばならない。 ...
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第8回 O君 着任
そんな感じで働いていると、ゼネコンA建設の子会社B道路の監督が、我々の現場事務所に着任した。 現場は、そろそろ外構工事にも入らねばならず、それを一手に引き受けるのが子会社のB道路であり、その担当者が彼である。 以前現場で会ったB道路の所長が一緒にきてて、私に彼を紹介してくれた B道路所長 「山口ジジイさん。彼が明日から現場事務所に入る、O君ですけん。よろしくお願いします。」 B道路O君 「山口...
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第7回 私が入った現場とは
ここで、私が入った現場を紹介しよう。 延べ床面積、1500㎡。 工事金、6億くらい。 現場名は 真理の鏡礼拝所(仮名) 礼拝所? 私は、礼拝所という言葉を初めて聞いた。 私が入った1月には、躯体(構造体。要するに鉄筋コンクリートの柱や外壁や床)は出来上がってて、 造作工事に入ってた。 外部は、塗装工事、タイル工事に入っていた。 これから、業者の数が増えるため、現場を管理できる人間を増やしたか...
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第6回 子会社B道路所長が来た
前回の出来事があった翌日、B道路の所長が現場事務所にきた。図面の間違いの件で、A建設に呼びつけられたのだ。 私を雇ってるA建設の所長はすでに来ており、「彼は、山口ジジイさんといいます。」 と、紹介してくれ、3人で打ち合わせた。 所長 「彼(山口ジジイ)が測ったところ、おたくの図面はまるきり違うじゃないか、これじゃいかんぞう。」 B道路所長「いやあ、誠にすんません。測った者を怒っときましたけん。...
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第5回 所長登場
少し時間軸を戻し、私の初出勤から、5日目にもどる。 私の初出勤の5日後、スーパーゼネコンA建設の所長が現場にやってきた。 所長は、この現場のような、ゼネコンとしては比較的小規模の現場をいくつかもっており、それぞれの現場を巡回しているのだ。 だから普段は、各現場の主任が、現場の実質的な責任者なのだ。 所長 「おはよう。」 主任・私 「おはようございます。」 所長 「山口ジジイさん、これは間違いない...
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第4回 ゼネコン現場の一日
朝礼の直後は、忙しい。 業者の棒芯(リーダー)に、指示事項をつたえる。質問事項にも、答えねばならない。業者間の調整も考えねばならぬ。 何箇所かで、業者は同時に動いてるので、それぞれ指示しにいかねばならない。 一通り終えると、現場事務所に戻り、一服する。 私が現場事務所に戻る頃には、既に現場主任も自分の現場の段取りを終え、タバコを一服している。 主任 「何か問題ありました?」 私 「いえ、特にあり...
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第3回 ゼネコン現場の朝
2~3日は前回のような感じで、のんびりと働いていたが、だんだんと正月休みを終えた業者が現場に戻ってきて、朝礼もにぎやかになってきた。 ここで、ゼネコン現場の紹介を今回と次回にわけて行おう。 朝礼における私の仕事の一つは、ラジオ体操のテープの入ったラジカセのボタンを押すことである。 音楽が始まり、皆でラジオ体操。 現場の朝礼広場で、ゼネコンA建設の現場主任と私とが前に立ち、向こう正面に業者...
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第2回 ビール
初日の朝礼。 新年明けそうそうなので、業者は土工(いわゆる土方さん)が5人くらいだった。 この初日は、隣地との高低差を測る作業を行った。 土工さんに箱尺(メジャーのようなもの)を立てさせて、レベルをとる。 それを写真に撮影。 のんびりとしたスタートだった。 土工さんは、こちらが何か指示するたびに、 「はいっ。」「はいっ。」「これでいいですか?」 と、よく動いてくれる。 A組の教育が、行き届いて...
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第1回 初出勤
一年ほど前の冬、失業生活を送っていた私は、再就職した。 会社は、社員が10人程度の零細なとこだった。現場監督が7人、事務員2人、社長といった構成。 仕事の内容は、取引先のゼネコンの現場に入り、ゼネコンの監督の指揮の下、現場管理を行うということ。 早い話が、派遣社員である。 しかし、10ヶ月の長きに渡り失業生活を送り、やっとつかんだ職であった。 「がんばらないといけない。」 そのころは、いつも...
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第0回 まずは御挨拶
みなさん、よもや覚えておられますまい。 山口ジジイと申します。 私は、自他共に認める、劣等社会人でございます。 私は1年ほど前、失業してまして、職業訓練校に通ってたことがあります。 その際、こちらでない旧アンソニーズ・カフェの方に、 『山口ジジイの失業日記』 という記事を、約半年間、週に2回連載させていただいておりました。 その際、当時の読者様、執筆陣、そして編集長から多くの励ましと叱咤激励を...